世界遺産石見銀山地区に地域とのつながりを大切にする町の銀行~山陰合同銀行大森出張所

取材

昨年11月に店舗横の倉庫を改装して新たな接客スペースがオープン!町とのつながりを大切にしていらっしゃる様子など取材してきました。

重要伝統的建造物群保存地区にある銀行

人口400人の世界遺産石見銀山の町並みは、文化庁の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
その中にある古民家を改装した山陰合同銀行大森出張所。
江戸時代の風情が残る建物は、一見するととても中に銀行の業務窓口があるとは思えません。
昨年11月に店舗横の倉庫を改装して新たな接客スペースがオープンしました。


接客スペース

店舗に入るとすぐカウンターがあるのですが、その前に手続き用の机を置くには狭く、ほかの人が入れる場所が無い。
相談なども話が聞きにくいということもありました。
以前から、お客様が様々な手続きや相談に来られても十分なスペースが無いため気になっていたと所長の向田信子さん。

今回改装にあたって、店舗との間の全面壁だったところに窓をつけたところで、空間が広がってどちらの様子も見渡すことができます。
また既存の営業室からもそのまま入れる引き戸の入り口を作り、押し車や車いすの方も余裕を持って出入りができるようになっていました。
接客スペースには、昭和レトロな雰囲気の素敵な応接セットや椅子が置かれていて、古民家の佇まいにマッチしています。
これらの家具は地元のリサイクル業者で購入されたそうです。
新しい部屋にはローカウンターが新設され、口座開設などの手続きをゆっくり座って出来るようになっていて、向田さんはじめスタッフの細やかな配慮が見て取れます。
もちろんここにはATMはありません。

町の人とのつながり

淘汰されてもおかしくない地方銀行の出張所がなぜここ大森に残っているのか。
世界遺産のこの町では町の人たちがこの町を拠点にした商売をされています。
中でも「中村ブレイス」と「群言堂」という2つの大きな会社は、たくさんの人を全国から引き寄せています。
両社共に郵便局や地元の銀行をすごく大切にしていて、「この町に地方銀行の看板が上がっていることを誇りに思っている」と言っておられるそうです。
ごうぎん本部の人や役員さんが訪れた際には、町の人がいかにこの出張所が町にとって大切であり、誇りに思っているという思いを町民が直談判して存続が決まったということでした。
そんな町の人たちに向田さんたちは何かできることは無いかと思ったそうです。

新たな場所

取材中も近所の人がふらりと顔を出して、ガイドの会の人が観光客を案内する途中で、出張所の中を見せたりする場面がありました。
けっこうな頻度でそういうことはあるらしく、ほかの職員さんも普通に挨拶されています。

現在の店舗は5代前のごうぎんの大森支店長の実家を改装。
オーナーの方は現在でも年に2、3回帰省されて、瓦の手入れをするなど家を大切にされているようです。
今回の改装についても喜んでくださっているということでした。

座敷の相談スペース

また元の倉庫の場所だけでなく、その奥の畳20畳ほどの広々とした土間も綺麗にしてあり、また座敷も相談ができるスペースに整備されていました。
住宅ローンや資産運用の相談を受けることができるそうです。
お客さんのほとんどはこの町の方で、いざというときの相談に来店され、ここで解決できなければ本店からも人が来て相談にのられているそうです。
スマートフォンのアプリも便利ですが、アプリだけでは解決できないことをこの場所で聞かせていただくことを大切にしていると言われていました。

お話を聞いたのはこの出張所に10年お勤めの向田信子所長。
大森に通うことで町の人たちの暮らしを見続けてこられました。銀行業務はもちろん、町の行事等にも積極的に参加されていて、町の人たちからの信頼も厚い方だなあと発掘スタッフもかねがね感じていました。
この町はどんな形でも町に関わってくれる人を大事にする町なんだなと向田さんのお話を聞いて感じました。

お稲荷様と井戸神社

もう一つ特別な場所を案内してもらいました。建物の裏の裏庭にあるお稲荷様です。
その向こうの山手にはちょうど井戸神社があってそこで柏手を打つと響くのです。
まるで城上神社の鳴き龍のように!

向田さんは毎朝一日の始まりに神棚、お稲荷さん、井戸神社に柏手を打ってお参りされるそうです。
ここに暮らすように勤務されている様子がわかりました。

世界遺産でありながら「暮らし」を大切にする大森の人たちを見て、ここに人が集まる理由がわかるような気がしました。

山陰合同銀行大森出張所について

山陰合同銀行大森出張所
住所:島根県大田市大森町ハ74
TEL:0854-89-0121
営業時間:9:00~11:30/12:30~15:00

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